作 / アラバール
訳・脚色 / 田尻陽一
構成・演出 / 神宮寺 啓
愛知県芸術劇場小ホール / 名古屋
響のホール / 福井
関西外国語大学 谷本記念講堂 / 大阪
スペインの劇作家フェルナンド・アラバール(1932~)が1960年代に書いた代表作です。現在はスペインで活躍していますが、デビュー当時はフランコ政権下、こういった作品を上演することはできませんでした。1967年にパリで初演されています。不条理劇の雄として名高いアラバールの作品には、悲劇と道化芝居、詩と憎悪、愛とエロチシズム、悪趣味と洗練された美意識、神聖と冒涜といったものが同居しています。
□作品について□
アラバールは最初、「建築家とアッシリア皇帝」をフランス語で書いた。1975年にスペイン語版が出たが、アラバール自身が書き直した1984年版を、今回の翻訳の底本とした。
舞台設定は絶海の孤島。ここに飛行機が墜落し、文明人と原始人の奇妙な共同生活が始まり、戯曲は生→死→生と永遠に繰り返す循環構造になっている。これが面白い。ただ、そこに出てくる母親の役がどうも薄い。アラバールの母親は共和派だった父親を密告し、フランコ派に手渡した人だ。このことを大きくなってから知ったアラバールは、母親と決別し、フランスに行き、演劇人として活躍し始めるのだが、母親に対する特別の思いが彼にはあるはずだ。なのに、この思いが『建築家とアッシリア皇帝』に登場する母親には薄くしか書き込まれていないと思ったのだ。
1999年、イスラエルのテルアビブで『愛の手紙』が初演された。スペインでの初演は2002年、出版は2004年。読んでみると面白い。母親のモノローグ劇だが、母と子の異常なまでの相愛と憎悪に溢れかえっている作品だ。
台本を作るに当たり、演出家と相談しながら、早速『建築家とアッシリア皇帝』のなかに『愛の手紙』の母親を組み込むことにした。生と死の循環構造はそのままに、絶海の孤島ではなく、日常生活でわれわれが他者を意識しながら繰り返している「ごっこ」をクセック流に舞台化することにした。われわれが真剣に演じている日常生活における不条理な笑いを楽しんでいただけたらと思う。循環だから、タイトルも『アッシリア皇帝と建築家』とした。ご了解を。
翻訳・脚色 田尻 陽一
□あらすじ□
ある日常の空間。そこへ皇帝と称する男が登場し、やがて共同生活を始める。建築家と呼ばれる男に、近代文明の洗礼と教育を施していく。
そのうち恋人、女、産婦、修道女、妻、弟、母親、母親の幼友達などが登場する芝居を、二人で演じていく。しかし、不服を唱える建築家は皇帝の前から姿を消す。寂しくなった皇帝は帰ってくるよう懇願する。
帰ってきた建築家と皇帝は再び芝居を始める。ところが実母殺しの裁判劇となり、次々に真実が暴かれ、最初は「ごっこ」だったものが、法廷の空気は次第に真剣みを帯びてくる。裁判の成り行きを恐れる二人。
そして遂に皇帝に死刑が言い渡される。
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