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スペイン「エル・インパルシアル」紙 田尻陽一インタビュー

ラファエル・フエンテス記者

2024年7月6日土曜日, 19:41配信


田尻陽一「日本ではスペイン文学への関心が高い」


本日、ティルソ・デ・モリーナ作『セビーリャの色事師』の素晴らしいバージョンが、日本の著名な劇団クセックACT によってアルマグロ国際古典演劇祭に到着した。エル・インパルシャル紙が、同劇団の翻訳責任者、田尻陽一氏に話を聞いた。


スペイン文学に興味を持ったきっかけは何ですか?


私が子供の頃、第二次世界大戦が終わったのですが、日本は完全に破壊尽くされ、耐え難い飢餓に苛まれていました。ですから、子供の頃からアルゼンチンに移住しようと思っていたので、大学はスペイン語学科に入りました。ところが、ある授業でベッケルのロマン主義の短編小説を読んでいたのですが、感動して一晩中眠れなくなったのです。そのとき、言葉には他人とコミュニケーションをとるためだけでなく、人に感動を与えるエネルギーもあるのだと思ったのです。それ以来、私は言葉が持つ力を研究しようと決心したのです。それが私にとっては演劇だったのです。


一般的に、スペイン文学は日本で知られ、魅力的だと思われていると思いますか?


すでにかなりの数の小説、戯曲、詩が出版されています。例えば、数年前にはフリオ・ラマサレスの小説が出版されました。セルバンテス、サンタ・テレサ、そして黄金時代の劇作家たち(ロペ・デ・ベガ、ティルソ・デ・モリーナ、カルデロン……)の作品のほとんどすべて。また、ベナベンテ、フェデリコ・ガルシア・ロルカ、ミゲル・デ・ウナムーノ、アメリコ・カストロ……、そうです、日本ではスペイン文学への関心は高いと思います。


劇団クセックACTとの出会いは、どうだったのですか?


私は、1966年から1968年まで2年間、マドリードのコンプルテンセ大学に留学しました。帰国後、日本の演劇雑誌でバジェ=インクランの『リガソン』の舞台写真を見つけました。それ以来、私は彼らと一緒に仕事をしています。


あなたの劇団は歌舞伎の影響を受けていますか?


スペインの批評家の中にはそう指摘する人もいます。しかし、私たちは日本人です。つまり西洋人の体を持っていません。ですから、わたしたちの演技はどうしても日本人固有の演技にならざるをえません。別に、私たちは歌舞伎の演技を模倣しようとは思いません。しかし、伝統は考慮しなければいけませんが、私たちの身体表現は日本人固有の身体を使った自然で自発的なものなのです。


スペイン演劇の上演は、あなたの国ではどのように受け止められていますか?


とても良いと思います。私たちの劇団クセックACT以外にも、ガルシア・ロルカの作品を上演したいという劇団はあります。いままでに私はそういった他の劇団とすでに仕事をしたことがあります。『血の婚礼』、『イェルマ』、『ベルナルダ・アルバの家』などを上演してきまた。


それほどフェデリコ・ガルシア・ロルカの作品の翻訳してきて、彼のどこに惹かれるのですか?


一言で言えば、彼のエロティシズムです。

で、今回はティルソ・デ・モリーナですね? どうして『セビーリャの色事師』を選んだのですか?

ドン・フアンという言葉は、すでに『ドンファン』という日本語として定着しています。しかし、「女たらし」という意味で使われます。しかし、ティルソの戯曲では、ドン・フアンは女性を所有することに興味があるのではなく、女性を征服することに興味があります。征服するといっても、甘い言葉でもって口説き落としたり、恋人になりすまして女性をものにするのです。つまり、ティルソのドン・フアンは、性的快楽のためではなく、社会にあがらう反道徳的な行為からドン・フアンを演じているのです。女性を誑かせば、死ぬときに神から罰を受けることは知っているのですが、死ぬまでにはまだ長い時間が残されていると考えています。既成の社会体制、社会規範に逆らうという点で、ドン・フアンはある程度、革命的なヒーローであるように私には思えるのです。


戯曲を日本語に翻訳するにあたり、何か変更を加えましたか?


ドン・フアンが女性を誑かす方法は2つです。ティスベアやアミンタのような下級階級の女性には、「結婚しよう」と嘘をついて誘惑します。イサベラとかドニャ・アナといった貴族の女性の場合は、恋人のふりをして寝室に入ります。上演時間の制約は約1時間半ですから、貴族のイザベラと平民のアミンタの場面は省略しました。

ただし、ドン・フアンの欺瞞に対する彼女たちの不満は残しました。


『セビーリャの色事師』を翻訳する際して、どのような点に苦労しましたか?


韻の問題だけです。しかし、日本語のリズムに合うように訳しました。

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